オペラを見てきたよ。
「カルメン」ビゼー 1999/01/27 東京・新国立歌劇場


 今日のカルメン、主役がともかく魅力的でした。ナディア・ミヒャエル。アルトのドスはちゃんと有り、また押さえた声もリリカルに響いて。この「リリカル」が無いと、カルメンの妖しさって表現できないのよね〜。パワー出したくなる所で、ふと引いてみる色っぽさ。これがないとね〜。カルメン登場の第一声が、すっと妖しげに綺麗に来て。「お、これはいけるぞ彼女!」と頭から魅惑されました。

 そしてまた、彼女はとっても綺麗で細かったの♪。舞台上で、ちゃんとひときわ高いレベルの美人さんだったの♪。仕草がまたイイ。どこかあどけなくて、あやうくて、でも妖しいのね。いつもはゆらゆらふらふらしてるんだけど、いざ、がん!とパワー出す所の押し出しがまたキツくて素敵。ありゃー惚れるよ。

 ドンホセ。カルメンとのからみ部分が特に良かったのは相乗効果かしら。ハンサムさんでは無かったけれど、骨太な、いかにも田舎者といった風貌が、そして若干個性に欠けていたように思える点も、それはそれで彼の純朴さに合っていた気がする。

 しかし今日改めて見てまして、ホセって、実はかなり短気でキレてる役所だったんですねえ。あるいはカルメンに出会った事によっておかしくなってしまったのか・・・。カルメンに上司が迫るとナイフを出し、闘牛士が来たとなったらナイフを出し、事有るごとに刃物を持ち出すタイプ。ナイフを出した彼を止めるのは、いつもカルメン。結局殺されてしまうんですが・・・。実は彼女の方が冷静で、肝座ってたのね。ホセって、カルメンに迫られてもすぐクラクラカーっと来ちゃうし、ラテン系にしてもかなり血が熱〜いのね。

 衣装。今日のカルメンは「新演出」とかで、衣装もなかなか変わっていた。カルメン、スリムジーンズの上にふわっと薄手のスリット入りドレスとか。結構綺麗で、あまり違和感無く見られました。不愉快な奇抜さがなかったのが良かったです。

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 ところで今回のYKチェック、ちょっとミカエラさんに入れたいと思います。

 いえね、ミカエラ役の歌が良かったというワケじゃー決してないんです(すまん・・)。本来彼女ってカルメンと対をなす天使のような女性、という位置づけの筈なのに、今回のミカエラさんはまーエキセントリックな歌い方で。ミスキャストだなーと思って途中まで見ていたんです。おまけに衣装も「ダサさの極み!」。

 元々私はこのオペラの「ミカエラ部分」はぜーんぶ嫌いで、彼女が出てくると眠たくなるので早くこのシーン終わってくれないかなーと待つのが常だったのですが。今回は特にヒドイな、などと思いつつ。

 ところがです。見て行くウチにですね。だんだんそれがイイ感じに、「ミカエラが出てくるとタイクツ」のパターンを創り始めて来たんですよ。

 クセのなさすぎる退屈な、半端に綺麗な音楽をエキセントリックに歌う事によって、ピュアな役所の筈の彼女が、「自分は正しくて綺麗、他は汚れてるって信じ切っている、嫌な感じに自信満々の神様オタク女。」に見えて来た。「あんた達は汚れてるのよ。なぜそれが解らないの?きーーっ!」的な女。おまけに仕草がもーブリブリ。かっ可愛くない!あんた自分の事実は全然解ってないだろうミカエラ!?とツッコミを入れたくなる。

 つまり、音や衣装、歌や演技の相乗効果で、彼女って善良な人間ではあるのかもしれないが、こんなに視野が狭くてタイクツな女が側にいたら、ドンホセがカルメンに惹かれるのも解るぞ!と言う、徹底した「善意のタイクツ女」に仕上がっていた訳なんですよ。なもんで、結果とても面白い舞台になった。逆にカルメンがどんと引き立つのですね。

 もしかして、もしかして、ビゼーはそう感じさせる為に、わざと「ミカエラ部分」をあんなにタイクツな音に作ったのか?そしてあの歌い手さんの選択は、衣装の選択は、演技は、これすべて確信犯、演出なの?それとも偶然そうなったのか?演出だとしたらすごい。偶然の連鎖ならそれで、だからこそ舞台って面白いと思ってしまう。見直したぞ、ミカエラ(部分)!

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 そして今回のダメ出し。エスカミーリョ、お前だーーーっ!過去最低。あの闘牛士の歌はなんだ。声のヴォリュームこそ、身体デカイから熊みたいに吠えとったが、あんなリズム感の無い闘牛士にどこの牛が仕留められるとゆーのだ。のろのろもたもた歌うんじゃない!あんたが牛か!可愛そうにカルメン、あんな熊に惚れちゃったなんて。ほろり。

 「新演出」の方は、思っていた程変わった事かましてた訳ではなかったんですが、細かい所が丁寧でまあまあ好感が持てました。少人数のバレエダンサーを全幕通して登場させ、上手く使っていたと思います。ただ、味としては良かったんですが肝心の振り付けがちょっと・・・・。

 ま、でもこのオペラははやはり主役のカルメンが命。美人で歌、演技も達者なナディアさんの活躍で、(そしてミカエラの後押しで)素敵な舞台となったと思います。熊に惚れちゃうのも非運の一つと思うと味も出る。



1999/01/27 Y.K.