Richard Wagner
ワーグナー
      

 
 

 絢爛豪華な音の洪水。官能と退廃。愛について語るのにいつしか滅びを語っている。ああ派手だった楽しかったと劇場を出るのに一抹の虚しさがいつも付きまとう。

 ワーグナーのオペラ、楽劇群の提供する「空間の広さ」は群を抜いていますね。始めの一音で劇場はどこかへすっとび、突如出現するワーグナー空間。文字通りのトリップでございます。ワーグナー物の虜になると他のオペラが退屈で聴けない、と語るワグネリアンの方々の気持ちも分かる気がいたします。

 ただ私としては、ワーグナー楽劇の普遍的なテーマ、愛(あるいは死)の救済的な内容には残念ながらついて行けない。オランダ人のゼンタやローエングリンのエルザ、タンホイザーのエリザベートに至ってはちと友達にはなりたくない思い込みの激しすぎる女性としか思えません。

 しかしそれにしても、ワーグナーの楽劇は人間について語る語る。まず脚本自体が長い。登場人物は自分の胸中について非常に雄弁である。あの人が好き、だからあの人の為に死にます。ちゃんちゃん、では終わらせない。私の好き嫌いに関わらず、彼等は常に自分の「人間」(あるいは人間離れ)を主張して止みません。怒涛の如きセリフの渦に音楽の渦がからんで、だからオペラではなく「楽劇」。

 「楽劇」と言うからには、練りに練った(と思われる)セリフの数々を支える音楽も、一箇所足りとも軽く扱われてはなりません。音楽先攻でサビは親切に繰り返してくれるヴェルディ等や、またモーツァルトの、ちゃんちゃ〜ん、はいセリフ、という殆どラップな処理ともそこは一線を博した所。言葉には無駄な繰り返しが無く、変化する言葉にあわせ音楽も脈々と変化を繰り返す。だから音楽が波打つ、たゆとう。

 結果、ワーグナーの楽劇は長い。はいアリア、はい合唱、と聞いている人に親切な作りでもない。だから言葉が理解できないとかなり辛い。やはり初めて見る時は字幕つき、あるいは前に全曲を訳と首っ引きで聴いて理解を深めておかないと楽しみが半減してしまうかも。

 とは言っても、ストーリーはこの際無視、壮大な音楽の渦に埋もれてトリップするという楽しみ方もまたアリ。それだけでも充分過ぎるほど楽しめる力を、独立した音楽としても持っているとは思います。

 上にも書きましたが彼の楽劇のテーマには、愛の救済やら神がかった物が非常に多いですね。愛の救済に首を捻る私も、神々の・・という舞台設定は単純にロマンチックで好きです。三歩離れてしまいたくなるヒロインも確かにいますが、魅力的な登場人物もまた多い。指輪のブリュンヒルデ、トリスタン・・・のイゾルデは非常にカッコ良くて結構好きだぞ。

 長々と書きましたが、ワーグナーのオペラ、楽劇はとりあえず
 「ワグナー渦巻きに溺れてトリップ、行ってらっしゃいませ。」
 これしかないのではと思うのでありました。 


追記:タイトルのスペル、ウムラウトを全て無視しております。ご了承下さいませ。