Der Fliegende Hollander
さまよえるオランダ人

 Wagner物の中で最も親しみやすいと思われる一品。
 時間的にもそんなに長くないし、合唱も荘厳というよりは一緒に歌いたくなる楽しい旋律が多い。
 一説によると、ワーグナーが借金に追われてパリに逃げる時に、舟が嵐にあって難破しそうになったんだそうです。その体験をハイネの小説と結びつけて、この作品を作ったのだとか。かくも実体験は大切なり。

 しかし何年か前にTVで見たオランダ人、お名前は忘れましたが素晴らしい歌唱力のゼンタではあったんですが、何と申しましても、かなりご立派な体格で・・・。
 登場の部分、「夢見るように目を閉じて椅子にぐったりと座っている」という設定だったんだろうけど、疲れたお相撲さんみたいで・・・思わず家族で大爆笑。ごめんね。TVって残酷。

** story
** music -- 見どころ・聴きどころ


◆◆◆◆◆ Story ◆◆◆◆◆
 

主人公であるオランダ人は、海の難所で神を呪う言葉を吐いた罰で、幽霊船の船長となり、永遠に海をさまよわなければいけない運命。
ただし七年に一度だけ上陸することが許され、その時彼に永遠の愛を捧げる女性と出会えれば救われるという。救われるというのはすなわち「死ねる」ということなのでしょうが。この場合。

ノルーウェイの海岸。嵐を避けてノルーウェイ舟が入ってくる。それに引き続き幽霊船が入港。降りてきたオランダ人とノルーウェイ舟の船長ダーラントが話し込む内、オランダ人はダーラントに娘がいることを知る。またダーラントはオランダ人から長年の航海でため込んだ財宝を見せられ、すっかり目がくらむ。ダーラントはオランダ人の素性は全く知らぬまま、彼を自分の故郷へ招待し、娘を嫁にやると約束する。

さて、ダーラントの娘ゼンタは、とーっても夢見がちな乙女で、伝説のオランダ人は必ずいる、そして自分が彼を救うのだと信じている。かなりアブナイ気もするが、父親があまりに拝金主義だったために反作用でこういった娘が出来たのだろうか。父に連れられてやって来た男を見て驚くゼンタ。彼は、家にあった伝説のオランダ人の肖像画と瓜二つだったのだ。二人は一目惚れで恋に落ち、ゼンタは彼に永遠の誠を誓う。

ところでゼンタの幼馴染みで彼女に岡惚れしていたエリックは、事の成り行きが当然面白くない。(一応おつき合いもしていたらしいので、ちょっとカワイソウでもある)。ゼンタが一人の所をつかまえて、前は俺を愛してたんだろ?一緒に花を摘みにいったりしたじゃないかーなどと詰め寄る。

そこへ影で立ち聞きしていたオランダ人が飛び出し、
「もうだめだ!俺は救われない、海に帰る!」
などと言って飛び出して行く。幼馴染みと立ち話をしていた位で何を古風なとも思うが、本当に昔の人なので仕方ない。ゼンタも彼を追いかける。不安になったエリックは皆を呼び集める。

オランダ人は、私は伝説のオランダ人だ。ゼンタ、君はここで幸せになるがよいと宣言し、舟を出してしまう。止める脇役たちを振り切ったゼンタは、自分の真心を証明する、と叫び岸壁から身を投げてしまう。
かくして彼女は彼に「永遠の誠」を通した訳で、オランダ舟は轟音と供に海に沈む。救済の愛のテーマが響く。
ここで二人が海から浮かび、抱き合い昇天して行く、というのが正規の脚本らしいが、この部分は割愛してしまう舞台も多いみたい。

しかし考えてみるとこのオランダ人、オペラ唯一の「名前を持たない」主人公ではないだろうか。オランダ人、と書くのはちょっと間抜けな気もするが何せ本名が出てこないんだから仕方ない。ローエングリンでも「名前を聞かない」に拘ったワーグナーは、人間が名前を持つ、あるいは名前に縛られるという事に何か特別な感情でも持っていたのか?

ゼンタは彼を何と呼んでいたんだろうか。脚本では「あなた」だけだった気がするけど・・・名前も聞かずに婚約するとは。ゼンタにしても、エリザにしても、昔の人はすごかった。

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◆◆◆◆◆ MUSIC ◆◆◆◆◆
見どころ・聴きどころ

 駆け上がっては落ちる弦の旋律。繰り返し繰り返し現れるフレーズが、荒海の雰囲気を上手く出してます。オランダ人のテーマも出てくるたびにゾクゾクするほどカッコいいぞ。
 何せ海の男たちが主役なので、ノルーウェイ舟、オランダ舟の音も歌も、楽しくも不穏にも迫力満点。合唱曲にも親しみやすい名曲が数多いです。

 また舞台美術にもかなり凝らざるを得ない。
(何せ音が派手だから、舟なんかチャチだとかなり間抜けになってしまう。)
 聞いても見ても、Wagner初心者にも絶対楽しいオペラ。私が子供の頃から親しめた唯一のWagner作品でもありました。全くオペラに興味を持たなかった兄もこれだけは必ず一緒に見に来たっけ。

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 一幕 

ノルーウェイ舟の甲板で水夫が歌う、故郷を思う歌がとても好きだったりします。いかにも若々しいテナーの小品。 出来れば見目麗しいおのこに歌っていただきたいものです(笑)。
水夫は長旅の疲れで歌いながら眠りこけてしまうのですが、その後不穏な旋律と供にオランダ人の舟が浮かび上がり・・・・はなからゾクゾクさせられます。舞台美術にも凝って欲しい所ですよね。

上陸したオランダ人が、海の荒波を思わせるラインの弦をバックに歌う、
運命を嘆くアリアもなかなか聞かせる。ちょっと長いけどー。

故郷へ向かう南風が吹いてきて、
南風だ!と水夫たちが喜ぶシーンもいかにもな感じが出ていてぐー。こういう差し込みコーラス?みたいなの、ワーグナーは本当に上手いよね。ここで故郷を思う歌が再び合唱で高らかに歌われるのでした。

 二幕 

頭から有名な糸つむぎの合唱。可愛い合唱曲ですね。女声合唱でよく単独で取り上げられる曲です。そしてオランダ人のテーマに始まるゼンタのバラード。ゼンタの愛のテーマと、水夫のかけ声を模した部分がないまぜになり、かなり迫力のあるカッコ良いアリアですぞ。二幕最後に近い愛の二重唱はちと冗漫で苦手。ねむい。後半は聞かせるんですが。

 三幕

何と言っても冒頭の、ノルーウェイ舟の水夫と女たち、そしてオランダ舟水夫も加わる水夫の合唱。楽しく始まった酒盛りが、オランダ水夫達の不吉にも迫力ある歌声に凌駕されて行く。やがて高らかにオランダ人のテーマ。このオペラ一番の見せ場でしょう。クラクラ来ます。(合唱が上手ければ。)

三幕は、手に汗握る場面と音楽の連続です。エリックとゼンタにオランダ人が加わった
三重唱の場面からオランダ人の告白のシーン、ゼンタが海へ消えるシーン、一気に駆け抜けます。しかし二人が昇天して行くのなら、ラストのゼンタが飛び込んでからの音楽はもう少しもったいぶっても良かったような気がするのは私だけかなー。


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